#15 楽園の果実
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「――……。」
火傷もなく、服にもソファにも灰は落ちていない。
どうやら意識が飛んでいたのは、ほんの一瞬のことだったようだ。
片腕をついて半身になり、灰皿を引き寄せる。
バングルの時計を確認すると、時刻は深夜1時を回ったところだった。
ドアの方へと視線を投げてからシャワールームへと歩き出そうとした時、室内に着信音が響く。
まるで、袖を引かれた様な感覚だった。
「……狡噛だ。」
音声着信のみのランプが点灯し、回線の向こうの相手の存在を告げている。
にも関わらず、物音はおろかその息遣いさえ、聞こえてこない。
「……佐々山……?」
奇妙な沈黙に耳をそばだてて呼びかけた眉が、知らず顰められる。
「…佐々や≪ごめんなさい≫
たった五文字の言葉がさして広くもない室内を、漂うようにして消えていくのが、分かった。
その跡を追いかけるようにした息継ぎを
≪ごめんなさい≫
分断した声が、プツリと切れる。
「………」
何を考えるでもなく、残った着信履歴にリダイヤルをかける。
意識とは違うところでそれが、今夜はもう絶対に繋がらないことは、解っていた。
それでも。
それでも、そうしたのは。
そうせずにはいられなかったから。
ただ、それだけだった。
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