#15 楽園の果実
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「少しはアンタの役に立ったか?」
縁から飛び退くような勢いで睡魔を振り切り、横向く。
「はっ、はいとても!…すごい先生です。公安局のアーカイブに入ってないのが、不思議で仕方ありません。」
「アーカイブ化は無理だな。」
窓外を見るその横顔に知らず、眉を寄せる。
「……何かあったんですか?」
「シビュラシステムと大学制度が同時に存在していた頃の話だ。公安局捜査官のために、雑賀先生の特別講義が設けられていた…だがある時大問題が発覚した。受講生の色相が濁り、犯罪係数が上昇したんだ。」
思わず見張った目に、淡白な視線が返ってくる。
「ま、全員じゃないがね。今日のようなマンツーマンの講義なら大丈夫だ。それにアンタは、色相が濁りにくい性質だしな。」
褒めているのか馬鹿にしているのか今一クリアではない最後の言葉は流し、疑問を口に乗せる。
「でも、講義だけで犯罪係数が上がるなんて…」
「底が見えない黒い沼がある…。」
流れる夜景に落とすように紡がれた言葉を膝を抱えたまま、受け止める。
「沼を調べるためには飛び込むしかない。先生は何度も調査の為に潜ったことがあって慣れている…でも全ての生徒が沼に潜って無事に戻ってこれるわけじゃない。能力差や、単純に向き不向きもある。」
「狡噛さんは深くまで潜りそうですね。それでもちゃんと帰ってくる…」
「いや」と自分の言葉を止めるような響きを持った、否定。
「どうだかな。少なくともシビュラシステムは、俺が帰ってこられなかったと判断した。」
バングルを見やってからかうような表情を浮かべた顔に、息を吐いて、口元を緩めた。