#15 楽園の果実
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「桜霜学園美術教師、柴田幸盛。」
映し出されたデータに添えられた写真を仰ぎ、シートに背を預ける。
「ということになっているが、実際は介護施設に収容された全く無関係の老人だった。彼の経歴が改竄され、教員になりすます上で利用されていた。」
「完全な偽造経歴じゃないところが、悪質かつ巧妙っスね。」
縢の苦笑混じりの評価を聞きながら、口を開く。
「しかし教師なんて人目に触れる仕事に就くとは、大胆なのか間抜けなのか。」
恐らくは、前者なのだろうが。
「それがですね、映像データは全てクラッシュ。かろうじて残っていたのはほんの短い音声ファイルのみ…」
キーボードの操作される音に向けると、難しい顔をした六合塚と目が合う。
「残された手段は昔ながらのモンタージュ写真と似顔絵作成の二つだけ。勿論どちらもやってみました。」
「その口ぶりからすると、外れか。」
「ええ」と短い答えに、目を伏せる。
「結局、佐々山が撮ったピンボケの写真しか手掛かりはないってか。」
「つか、光ちゃんにも聞くべきじゃないスか?コウちゃん同様、ありゃ相当調べ上げてますよ。」
青白く浮き上がる男の写真を見ながら手を組み、顎を乗せる。
「ああ…あまり一人で動かすのには反対だな、伸元。」
そんな奴は、一人で充分だと言うのに。
「……わかっている。」
漂白したようなその出で立ちがいっそ、このまま画面の光に溶けて、消えれば良い。