#15 楽園の果実
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「もうすぐ日が昇っちまうな。」
薄紫の空から吹いてきた風は、成程、そんな匂いを含んでいる。
『思うんですけど、絶対人件費含め経費ケチりすぎですよね。』
「その年でそんだけ給料貰ってる人間に言えた台詞じゃあないだろ。」
故障した護送車の中で眠らされたままの被疑者と、その縁に腰掛けて雑誌を読んでいる六合塚さんに向けた目を戻す。
この都市に来てもう何度か見た、光景。
新しい日を迎えると言うよりまるで一度時を止めて昨日の今に、巻き戻すような。
それでも
視界に入ってきた缶コーヒーに目線を上げ、手を伸ばす。
『……どうも。』
無言で自身のプルタブを空けたその視線を追えば、未だ燦々と輝くノナタワーが見える。
「王陵璃華子は十中八九消される。あと一歩だったがまた、振り出しだ。」
『振り出しじゃないです。』
ただ熱いだけのコーヒーにつけた唇から、眠気が剥がれ落ちていく。
『彼が、マキシマが実在することが証明された……大きな進歩です。』
腰を下ろしていた階段から立ち上がり、真正面から見た瞳に少しだけ笑いかけてみる。
そうして抜けた脇を後ろに、見据えるのは前。
『勝負はこれからです。』
さぁ
今日が、始まる。