#02 成しうる者
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
突如としてシンセサイズされた音楽が鳴り響き、瞼を開ける。
<ルパン・ザ・サード!―――真っ赤なバラは―アイツの唇―優しく―抱きしめて―くれと願う――瞳の奥に―獲物を―映して寂しく―追いかける―愛の在り
自己最短記録を更新したことにぼんやりと小さな勝利を感じつつ、身を起す。
と、明るい日差しの差し込む室内にノイズが奔り、眼前にサファイヤブルーの瞳を持った黒猫が現れる。
<おはよう、光。11月5日10時15分、今朝の貴女のサイコパス色相はパウダーブルー。>
瞬きしながら頭をかき、毛布の中で胡坐をかく。
『……あ……?』
<健康な精神で、優雅な一日をお過ごしなさい。>
くるりと尻尾を丸める様を見つめていると、脳内に昨夜見た光景が次々フラッシュバックしてくる。
汚わいに塗れた廃棄区画の様々な色合いの看板から始まり、六合塚さんの背中に、縢くんの笑顔、切れ掛かった蛍光灯の下で見た宜野座さん。
ぶちまけられた鮮烈な赤に、見開かれた執行官の瞳…彼のモッズコートのタグに書かれたブランド名の次は、へたり込んでこちらを見る朱ちゃん。
網膜をも両断しそうな青まできて、止めた。
物心ついた頃からの付き合いとは言え、さすがに多すぎる。
『今日はオフだよね。』
声なく頷いたホロアバターを避けながら、ベッドから出てキッチンへと向かう。
<今日は終日お休み。明日は14時30分から第二当直勤務ね。>
冷蔵庫を開けて水を取り出し、まずはコップ一杯。
ソファの背もたれに引っかかった皺くちゃのブラウスに見ない降りをして、ボウルにフルーツとヨーグルト、スプーンを突っ込む。
どさりと下ろした腰に覚えた鈍い痛みに、顔を顰めた。
<食べたら当然シャワーは浴びるわよね?終日お休みでも女だもの、それくらいはなさいな。>
スプーンを銜えたまま、呆れたような声を見上げる。
摂取カロリーがうんちゃらかんちゃらから始まった苛立ちと驚きに満ちた初日から比べれば、ずいぶんと改善した関係はしかし、まだまだ検討の必要性が、あるようだ。
"ルパン三世のテーマ"
歌 ピート・マック・ジュニア
作詞 千家和也
作曲 大野雄二