#13 紫蘭の花言葉
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『藤間幸三郎が捜査線上に上がったのは、扇島での聞き込み捜査中に遭遇した桐野瞳子の発言によるものですよね?』
「………」
佐々山の口から瞳子の名が出たことにさしたる驚きはない。
しかし扇島の聞き込み捜査中に彼女と出会ったという事実までは、別だ。
『それにより被害者少女と彼の血縁関係が疑われた』と何の感情も乗せられていない声が、続く。
実証のみで構成され、展開されていく事件の推移。
そしてその事実がさらに、その行為が幾度となく繰り返されたものである事を証明していた。
「そうだ。そしてその裏が取れ被害者女性がヤツの妹であり、二人が幼少の頃扇島にいたということがわかった矢先、三件目の被害者遺体が発見された。」
『アベーレ・アルトロマージ……桐野瞳子の父親ですね。』
流暢な発音で持ってその名を発した佐々山の目が、伏せられる。
その表情から察せられた問いを、口にする。
「会ったのか。」
少しの間を置いて返ってきた『はい』という声に瞑目した瞼の裏に蘇ったその顔はもう、おぼろげだ。
「………桜霜学園からもヤツの…藤間の捜索願が出ていた。刑事課総出で藤間の確保にあたり、扇島は全島閉鎖。俺達一係には周辺警備の任務が当てられていた。」
――離せ狡噛
俺に行かせてくれ
アイツの声はまだ
こんなにも鮮明に、思い出せるというのに。
「…………ここで何もしなかったら、俺自身が終わっちまう…………そう言われたんだ……」
あの時そう言い放ったその顔まで
こんなに。