#13 紫蘭の花言葉
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『お兄ちゃんは、どんな人でしたか?』
そう言ってカップを置く光ちゃんの顔に浮かぶ表情は、さっきまで自分に向けられていたそれと、変わらない。
変わらないけれど
だからこそそこに、彼女が失ったものの、大きさを。
僅かに目を細めた狡噛さんにとってもきっと、それは
「クソ野郎だった。」
「は?」
「女好きでね、唐之杜や六合塚なんて何度尻を触られたことか。その度にブン殴られるのに、全く懲りる様子がなかったな…」
多分。
「あと短気だった。」
伏せ気味にされたその眼差しに、私が泣きそうになって、どうする。
「一度火が点くと手が付けられなくてな…ある時色相チェックに引っかかった容疑者宅に踏み込むと、まさに浚った女性にのしかかってるところだった。佐々山はその男を危うく殺しかけた…当時俺は監視官だったから一応止めたが、内心楽しい奴だと思ってた。」
もう二度と会えないなんて、信じられないくらいに。
「女好きで凶暴で…実に楽しいクソ野郎だと…」
今閉じられているその瞳がもし、開かれていたなら。
彼女を、向いていたなら。
「少なくとも、あんな死に方をするような奴じゃなかった。」
違う、そうじゃない。
だからこそこの人はきっと、離れられないのだろう。
その影から。