#11 パンドラの箱
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燦々と降ってくる月明かりにやっていた目を落とすとふいに、少し、寒くなった。
「…そんなようなモンだったような気もするな。」
「上手い例えだ」と薄く笑って座りなおす様を見て、つま先を擦る。
『吸いたかったら吸ってもいいですよ、煙草。』
振り仰いだ面食らったような表情に笑い、裾を直す。
『こんな空気だと、さぞかし吸いたくなるんじゃないですか。』
「……知ったような口を利く。」
『想像力は豊かなんです。』
しばしの間を置いて響いたライターの音と、次いで流れてくる、紫煙。
それが不思議と不愉快ではないその事実が少しだけ、不可解で。
窺うように流した視線が、ぶつかる。
瞬間震えたような気がした身体を知らず抱いた、時。
『わ』
突如として視界を覆ったモノを顔から退かし、視線を落とす。
『………』
薄墨色の袢纏から伝わってくる温もりに、今度は、胸が。
だから
『……狡噛さんの、匂いがします。』
感じた視線から逃げるように、顔を埋めた。
『煙草臭い。』
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