#08 Bump
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ヴィジュアル・ドラッグ。
昔のものとは違い、マウント・ディスプレイを使って摂取するこれは、視神経から直接脳に作用する。
使うとストレスが大幅に軽減されて色相はクリアになり、その一方で犯罪係数は上昇するというのが、このドラッグのもたらす作用。
さっきの佐々山の言は、それを単純かつ見事に言い当てていると思う。
廃棄区画、潜在犯――自分達、執行官然り。
この完璧な都市を保つために[存在しないこと]にされている、[必要な]モノ。
保護されたジャンキーの行動を洗って割り出した寂れた映画館を右に見ながら、裏口を目指す。
『どれだけ犯罪が起こっても、廃棄区画は無くならない。』
古風な両開きのドア手前の壁に背を預けた佐々山を、見下ろす。
『何故ならシビュラに弾かれきれなかった人間にも居場所が必要だから、そして健全な人間にも、多少の優越感と適度な恐怖が必要だから。』
こちらを見上げた明るい色には蔑みや厭世観のようなものは一切ない。
『変わりませんね、この都市も。どこも。』
「…それを隠そうとしてる分、余計にタチが悪いと思うがな。」
『見たくないものをなかったことにする。それも一つの人間性ですよ。』との返答に鼻で笑い、ドミネーターを顔横に掲げる。
この佐々山光という女が、少しだけ、わかってきたような気がした。