#01 犯罪係数
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ポニーテールを揺らして行く背に意識を集中させていると、声がかかった。
息を整えながら壁に背を預け、目だけで遠ざかっていく六合塚さんを追う。
「何故…」
降ってきた言葉に横向くが、その視線は斜め前方に固定されたままだ。
「何故、この仕事を選んだ。」
ストレートな問いはだが、普通の人間なら誰もが抱くであろうもの。
それでもそれはだからこそ、自分にしてみれば余計に不思議なのだ。
『………』
全てを数値化し、精神状態は愚か深層心理さえも科学に解明させてその判断を仰ぐこの都市。
そこに住まいながら何故、人の行動に疑問を抱く?
その理由を知りたがる?
「……厚生省の基準を通ったのなら、他にいくらでも就職先はあったろう。」
『ああ…』
なるほどな、と息を吐く。
一つ疑問が解明され、また一つ、新たなそれが提示される。
つまりは[選べる立場]に立つ者には未だ選択の権利があり、自身で思考する有余も残されているのだ。
与えられた程度によって異なれど、そこには従来通り一個人としての悩みや葛藤が存在し得る。
そしてなんだかんだ、自分もその一人なわけで。
『そこはホラ…やっぱり妹としては?仇を討ちたいと思うじゃないですか。』
落ちた沈黙が黄ばんだ蛍光灯の下に浮かび上がり、笑みを刷く。
『なあーんて……』
振り仰いだ顔に口を噤んだ時、耳にノイズが奔った。