#07 狂王子の帰還
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眩しそうに目を細めてこちらを見るその姿に、知らず目の端と口元が、緩む。
境界に立つ人間に相応しいその仕草に。
『もう一回謝ったら、今度はこっちを投げます。』
手にした灰皿を掲げ、未だ向けられる視線を感じながら散らかったままのデスクに戻る。
<行ってしまうの…?>
<うん、こわぁいオジサンがいっぱい来たからねえ…>
<私も連れてって…!泥棒はまだできないけれど、きっと覚えますっ私――私、お願い…一緒に行きたい…!>
ペットボトルや鏡やら、その他化粧道具を鞄に投げ入れる。
言葉を発することなく、ただ、追いかけるだけ。
それに堪えられず仰ぎ見た顔に浮かぶ表情を見て、一瞬、言葉に詰まる。
『……いつもなんじゃ、ないんですか。』
問いを含んで凝らされた目を見返し、口を開く。
『そんなの。』
逸らした視線を床に固定して反応を待つと、秒針が余裕で一周りはするくらいの間を挟んで、空気が動く。
「……そうか。」
『……そうですよ。』
それだけ言って踏み出しかけた足が、止まる。
昨日と同じ、熱さで腕を掴む掌は
昨日とまるで、違って。
もし何かひとつ間違えたら泣けてくるくらいに、優しかった。