#07 狂王子の帰還
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「弥生はこの程度じゃ燃えないわ。もっと激しくて、情熱的なのがお好みよ。」
色っぽく囁かれた言葉に詰まり、手を合わせる。
「ええっと…」
「今は標本事件の話でしょう?続きは?」
カップ麺に箸をつけた六合塚さんに促され、唐之杜さんがタバコを取り出す。
「まあ明らかに専門家の仕業だったからねえ、操作の焦点も薬学・科学のエキスパートに絞り込まれていったんだけど…」
横顔が、遠くの過去を、眺めるようなものに変わる。
「その途中で、佐々山君がね」と閉じられた瞳に、目を伏せる。
「結局全然別件で捜索願いの出てた高校教師のアパートから、プラスティネーションの樹脂が見つかってねぇ。あホラ、コイツ、藤間幸三郎?コイツが失踪した途端に犯行も止まったし、まあ間違いなく黒だった筈なんだけど、状況証拠だけだしねえ……まあ、実際のところは迷宮入り?それに藤間には、科学の素養なんてなかったから問題の樹脂を誰が調合したのか、それさえも謎のまま。」
「共犯者がいた、ってことですか?」
「そもそも用途を承知の上で樹脂を作ったのかどうか…それすらもわからないんじゃ、共犯と呼んで良いのやら?入手経路も謎のままだったし、今のとなっては」
いつの間にか背を向けていたその目が振り向けられ、こちらを真っ直ぐに見上げる。
「神のみぞ知る、よね?」
何も言えず、押し黙る。
「佐々山、妹は今日は?」
「あ「午後から縢と私と第二当直。」
そう言って気の無さそうにまた麺を口に運んだ六合塚さんを見て、目を画面に戻す。
「……どうしてこんなトコ、来たのかしらね…。」
独り言のように小さく呟かれた問いかけが解れて、あっという間に、見えなくなった。