#07 狂王子の帰還
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細かな無数の水滴が床を叩き始めた音を確認し、腰を浮かせる。
なんとも殺風景な空間の中で、さらに異質な雰囲気を放つ扉。
にも関わらずまるで空気のように部屋に溶け込んでいるそれの横のタッチパネル式の開閉ロックを見てリングを起動する。
数秒の後に容易く拓いた道に詰めていた息を吐き、足を踏み出す。
思い描いてたのとそう変わらない光景を目にした瞬間
それでも
それなのに、せり上がってきたものに歯を合わせて、瞑目する。
ああ
『………』
やっぱり。
あの時肩に感じた暖かさと、内に伝わり響いた微かな震えまでが鮮明に思い出されて
逃げるように奥に向けた視線が、吸い寄せられる。
ひどくピントのずれた、一枚の紙写真。
それに手を、伸ばしかけた時だった。
『………』
よく知っている筈のその顔に浮かぶ、知らない、それはでも、確かに。
『……お兄ちゃん……?』