#07 狂王子の帰還
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見開いた視界に映る、見慣れた天井。
荒い息をそのままに、腕で顔を覆う。
凝り固まった身体を、どうしようという考えすら、溶けていく。
数瞬の逡巡の後、胸ポケットをさぐった指先に力を込めてみてようやく、半身を起こした。
一息吸い込んで吐き出した煙にひとつ目を閉じ、視線を横に流す。
薄汚れた写真に映る、おおげさなピースサイン。
その後ろでこちらを見るスカした表情に
「………」
鈍い音をたてて落ちた灰に目を落とした時、ポーンと軽い音。
膝を伸ばし、足を踏み出す。
ドアの開閉スイッチを煙草を持った方の手で押し込み、寄りかかるようにしてそれが開くのを見守る。
「………」
燃え尽きていくタバコの、徐々に大きくなっていく悲鳴に指先を動かすことすら、できない。
見下ろした視界の中でピンクブラウンの髪が動き、その顔が上向けられる。
『あ……』
無言で見つめ返すと、髪よりもずっと明るく、柔らかな色をした大きな瞳が笑みの形になる。
『ども。』
悪夢を思い出させても不思議じゃない、筈なのに。
底抜けに明るい笑顔に、目元がまるで痙攣するように動いたのが、わかった。