第二章
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第二章 一
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公安局ビル内、執行官隔離区画――執行官宿舎一○三。
天井でくるくると回り続けるファンをこうして眺め続けて、一体どれくらい経つだろう。
窓の無いこの部屋で流れる時間はひどく曖昧だし、特に気にする必要もないので時計も置いていない。
傍らの電気スタンドがぼんやりと照らし出す色気もへったくれもない、空間。
ここに住まうようになってから6年。
もうそんなに経つのかと思いながら、タバコを手に取る。
――お兄ちゃん
昨日聞いたばかりのその声が過去のものと、重なる。
「………」
あれから、6年。
ずいぶんデカくなったもんだと思いながら煙を吐いた佐々山の顔に浮かぶ、苦笑。
どうにも感傷的に、なりすぎる。
断ち切るつもりで勢いをつけて起き上がりながらデスク上に、手を伸ばす。
そうして引き寄せた、灰皿の横。
昨晩から置きっぱなしになっていた一枚の写真に目を落とした時、インターホンが鳴った。
シャツの胸ポケットにそれを素早く仕舞い込みながら、立ち上がる。
「佐々山、いるんだろ。」
低いが良く通る声を聞きながら、ドアを開く。
「よ。」
額に手をあて、がくり、という効果音が聞こえてきそうな程に肩を落とした彼の名は、狡噛慎也。
公安局刑事課一係所属・監視官。
つまり佐々山の直属の上司にあたる男だ。
「よ、じゃないだろお前…。」
一見して分かる無駄なく引き締まった体に、端整で思慮深げな面差し。
恐らくオーダーメイドであろう、仕立ての良いスーツ。
"天下の厚生省のエリートコースを行く男性"というイメージを、具現化したかのような彼の出で立ちにはだが、疲労の色が濃い。
「ブリーフィングすっぽかして、どこ行ってたんだ昨日。」
「わりぃ、わりぃ。」
「すっかり忘れててさ」と頭を掻く佐々山に、さっきよりも質量を増した溜息がぶつかる。
「しかも…なんで俺かギノに言わないんだよ……」
「止めてくれよ頼むから」とらしくもなく情けない声で頭をかき回す、狡噛。
不思議そうに目を瞬いていた佐々山の顔にややあってにやりと、人の悪そうな笑みが浮かんだ。
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