第一章
夢小説設定
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三
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「えじゃあ、来年にはもう大学進学?」
『はい。でも、そんなに珍しいことじゃないんです…たまたま考査で良い点取れただけで…。』
完全自動制御運転でに高速道路を行く覆面パトカーの助手席から眺める、東京。
今日も今日とて鮮やかに彩られた街並みと日の光が、若干暴力的なまでの強さでもって網膜に焼きついては、流れていく。
「Faculty Of Social Scienceてことは、社会学系…よね?」
『はい。社会心理学に、興味があって…』
<目的地への到着予定時刻が、変更されました。>
遠慮がちな声に被さった人工音声を受け、フロント窓に示されていた時刻が切り替わる。
「…くそ、こりゃ間に合わねぇな。」
「何よ、別にいいじゃない10分やそこらの遅刻。」
「そーゆー精神的ゆとり、ウチの堅物上司どもには皆無っすから。…あー俺、マジで二係に移動願い出そっかなー。」
「はははッ」と軽い笑い声を上げた青柳監視官に口元を緩め、窓枠に肘をついて顔を埋める。
何せ5分前行動どころか、10分前行動を推奨するような奴らだ。
配属当初の頃、当直中に船を漕いでるのをさんざ見逃してやっていたのは一体、誰だと思っているのか。
後数十分後に聞く羽目になるであろう小言に思いを馳せ、溜息を吐きながら目をやったサイドミラーに映る、その姿。
少しタレ気味の目に、無造作に先の散らされたショートボブ。
全体的に暗めのトーンでまとめられたカジュアルな服装から醸し出される、スレたように生意気な雰囲気。
造作は少々違うが、自分達の血縁関係を疑う人間は恐らく、いないだろう。
その外見、だけを見れば。
大した努力もせず、大方のことは人より頭二つ分は容易く、飛び抜けて魅せる。
それを鼻にかけることもなくあまりにも自然にやってのけるものだから、周囲の人間もいつの間にかそれを当然のことのように受け入れてしまう。
本当に血が繋がった妹なのかと、小さい頃から本気で疑問だった。
そしてそれは当然のように、今も変わらないらしい。
がしかし
「………」
無感動に窓外を見やる横顔はとても15のガキのそれではない。
ルーズなトップスから覗く浮いた鎖骨に知らず、眉を顰めた時。
『お兄ちゃん』
無遠慮に見つめてくるその様に、やけに色の薄い、瞳。
「…何だよ。」
一瞬の動揺を隠すように目を背け、問うてみれば。
『仕事なのにごめん………ありがとう。』
ぽつんと響いた言葉を追い出すように窓を開け、シートに深く背を預ける。
横から向けられる非難めいた眼差しには知らぬ、フリをした。
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