Epilogue
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Epilogue
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『………』
夢を見ていたような気がした。
長い夢を。
優しくて、哀しい程に美しい、夢を。
鉄格子に覆われた窓外から射し込む滲むような黄金色を浴びながら、身を起こす。
床につけた痣だらけの足に自然口元が、緩んだ。
運動神経は悪くないと思っていたのに。
昨日よりは今日、今日よりは明日。
進歩は当然感じているがこのままでは多分、駄目だ。
このところずっと考えている事に益々の必要性を感じながら、衣服に袖を通す。
「光ー。」
『起きてるって……』
扉の向こうから届いた呼び声に返しながら、ドアノブを捻る。
コーヒーの香りに誘われるように入ったリビングに満ちる、朝の光。
キッチンの向こうで忙しく立ち働いていた母がこちらを見咎め、「おはよう」と言いながらエプロンのポケットを探る。
『おはよう、マ
この細い体のどこに、こんな力があるのだろう。
掴むというよりも握りつぶされそうな自身の手首に目を落とし、ともすれば漏れ出そうになる悲鳴を堪える。
そうしたまま待つ。
以前に見た母のあの顔から必死で、目を背けながら。
ただ、待つ。
冷たい掌から力が唐突に
呼吸を忘れる程突然に力が、抜けてしまうのを。
そして
「光」
柔らかな声が私の名を、口にするのを。
「今日も綺麗よ、光。」
『………………………うん。』
愛しそうに目を細めるその顔を見返し、頷く。
『ありがとう、ママ。』
…ママ
―ママ、ママ、ママ。
ひとつ目を閉じて、ほら。
大丈夫。
『行ってきます。』
ほら、大丈夫。
「行ってらっしゃい。」
踏み出した世界は昨日と変わらない
何も。
私も、変わらない
決して。
見上げた視界を満たす色。
あの街を
あの場所を
あの人を満たす――碧。
両腕を広げて息を、吸い込む。
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I am still...here.