第六章
夢小説設定
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六
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流れた紫煙がくすんだ冬の空に、滲むように溶けていく。
「………」
公安局本部ビルの屋上。
生きる人間さえも四角く切り取っていくかのような構造のこの街で唯一、息が通る場所。
――今日
――今日なの
ともすれば呼吸が止まりそうな程の遠さに。
――ごめんね
近さに。
無意識に胸ポケットを探ろうとしているのに哂い、そのまま額に掌をあてる。
思わず掴んだ腕の細さを、思い出しながら。
輝度を増していくだけのモノなんて、在るわけが、ないのに。
それでも
それでも、出来なかった。
今更何が出来る。
何を、してやれる。
聞こえた悲鳴から逃げた自分も
向けられた笑みに寄った自分も
これ以上見抜かれたく、なかった。
これ以上、見たくなかった。
結ばれない温度を選んだのは
繋がらない場所を、望んだのは
ただ怖かったから。
ただ――
「あ!」
背中にかかった声に、いつの間にか伏せていた顔を上げる。
「お前、ちょっと一服に何十分かかって……………」
険を含んだ眼差しが訝しげなそれに変わっていくのをただ、眺める。
間に落ちる、影を。
「佐々山?」
面食らったようにその瞳が瞬かれるのを見て一体自分は今どんな顔をしているのだろうと、思いながら。
「わりぃ、わりぃ!」
「……お「空気が澄んでると、タバコが旨くてさ。困るよな。」
何事か言いかけたその肩をすれ違いざまに叩き、歩き出す。
どこまで彷徨っても多分変わらないこの隙間をでも、何処へ。
――ごめんね
いつまで。
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