第六章
夢小説設定
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第六章 一
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――電話?
心底驚いたと言った風な青柳さんの顔はそういえば、とても可愛かった。
うららかな陽気に背を押されるようにして、足を踏み出す。
吹き抜けのエントランスホールの床面に描かれた、シビュラシステムと厚生省公安局のマーク。
何食わぬ顔をして近づいた案内ホロに寄ればビルは地上80階、地下8階構造。
刑事課フロアの位置を確認し、エスカレーターへと向かおうとした時。
「そうは言うがお前…」
「だーかーらー、言ってんだろ?」
かったるそうな声でそう言いながらタバコを挟んだ右手で隣を指したその顔がふいに、こちらを向いた。
目を見開くのを見つめ返し、同僚らしき男性が肩越しにこちらを向く前に踵を返す。
「どうした、なんだ?」
「え……あ、いやぁ……わりぃ狡噛。ちょっ先戻っといて。」
「はぁ!?」
「一服、すぐ戻っから!」
「っおい!」
「今吸ってんじゃねーか」という擦れたような声を聞きながら、思う。
[飼われる]というのは一体どんな、気分なのだろう。
首輪を填められてこの都市を、駆け回るのは。
考えずとも明らかなそんな疑問を抱いたのは、多分――
「……何、やってんだ。」
かかった声に振り返って見た顔に口元が、緩む。
とそれが分かったのは実際、一拍遅れてからだったけれど。
『びっくりした?』
そりゃあびっくりするよね。
こんな風に私が、現れたら。
こんな風に私が――
『お兄ちゃん』
無造作に
駆け寄って、そのスーツの裾を掴む。
笑いかけながら見上げた見慣れた表情には気づかない、振りをして。
『ね、びっくりした?』
触れたら。
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