第五章
夢小説設定
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五
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車窓を流れる仮想夜景。
ガラス一枚を隔てたそれがやけに、とても
――だが君は知っている
――それを無自覚に信じて生きる人々を……
――その在り方が善でなくとも、悪などでは決して有り得ないことを
とても、遠い。
この隙間を例えどこまで彷徨っても多分これは、このまま。
窓に触れた指先が震えたような気がして。
掌に目を落としながらゆっくりと、握りこむ。
暗がりに浮かぶ影が目に、映った瞬間。
電子音声の告げた名前に全ての向きを変える。
<光>
落ちかかってくる髪を耳にかけながら、鞄に手を伸ばす。
ずっ、と聞こえた情けない音には聞こえない、振りをした。
<お前、今どこ?>
覗き込んだ鏡に当たり前に映る、自分。
『………車の中。』
<…――ん何だよギノ先生!……はァ!?今話し始めたばっか……あー!も、わかったって!!…ったく……あー………今どこ走ってる。>
『………首都高。』
<……のどのへ『分かんない』
苛立ったような声に被さる吐息を通話口の向こうに感じて、声を大きくする。
『わかんないよ……っけどっ…………平気、ごめん。多分もうすぐ着く。……ってナビが言ってる。』
タバコはとても体に、悪いのに。
言えたらいいのに。
言えば、いいのに。
しんと落ちた沈黙をどうしたいのか、分からない。
<………そうか。>
『…………うん。』
<………………………………気ぃ、つけてな。>
捕まえる前に散った、言葉。
ディスプレイに表示された名前の下に刻まれた、時。
『………』
上げた顔を再び伏せ、膝小僧に額をつける。
このままでもいい。
遠くても、いい。
いいから。
その声が残していった温度を感じながらちじこまるすぐ横を過ぎていく、碧。
――大丈夫
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Are you still...here?