第五章
夢小説設定
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三
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「成る程…」
その声に体内の熱が下がるのを感じた。
徐々に下降していくのではなく、いきなりゼロにまで落ちるのを。
「君は、今のこの社会の在り方に……特に心理解析測定のやり方に不満があるのか。」
眼鏡を押し上げた雑賀教授の目を、見返す。
『システムを…シビュラ制度を否定するわけではありません。ただ、それを実行しているのは我々人間だと言いたいだ「シビュラの管理下からの逸脱。」
「君が今口にしたその思考。それ自体がその行為に、値する。」
生命の檻
パノプティコンとも呼ぶべき、この都市。
意思に嵌められた枷
外せば曇る、心。
それが
『…私は…』
自分が――[世界]が見えてしまったのは
――判断の道徳は、基準を持たない精神の道徳を軽蔑する
『それでも私は』
見えるように、なったのは。
『私が私で在ることを、選びます。』
「…君は……」
頷いてそう言うと「成る程…」とさっきよりも小さな呟きが漏れる。
「ご家族の誰かに、"潜在犯"がいるね?」
問いかけの形を成してはいてもそれは、答えを求める類のものではない。
引きずってきたのかそれとも、追いかけてきたのか。
どちらかは分からない。
どちらもなのかもしれない、どちらでもないかもしれない。
だけど
だけどあの日から、ずっと。
『………………優しい、人なんです。』
誰も傷つけずに生きることなんて
誰にもそんなこと、できるわけがないのに。
…違う。
だから、なんだ。
きっと。
「そうらしい。」
いつの間にか伏せていた目を、上げる。
「……完璧性…永遠性・普遍性なんてものはそもそもが宗教的心理概念だ」と続けられた言葉にさえも含まれるまるで、滲むような笑み。
『………概念なんて、簡単に変わります。変えられる。』
「だが君は知っている。それを無自覚に信じて生きる人々を……その在り方が善でなくとも、悪などでは決して有り得ないことを。」
触れようとして気づいた。
壊すつもりで、握り潰すつもりで伸ばした手の先に、在るモノ。
「概念と観念とは、全く別の物だ。」
どうしたら良いかは分からなかった。
だから、引っ込めた。
それはしちゃいけない……できない。
それだけは
それだけは、分かったから。
「誰も強要はしない。背中を押すことも、しない。」
近づいてくるこれは
「自分で考えて、自分で決めなさい。」
微かな、エンジン音。
「また会う時があればその時は歓迎するよ。僕の、生徒として。」
『………はい。』
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