第五章
夢小説設定
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第五章 一
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身分証明やらサイコ=パス検診やらと、小1時間も手間をかけさせられた末にやっと借りられたレンタカーはほとんど全自動運転。
都市機能とリンクしている高性能AIに行き先を告げてからは、ハンドルを握る必要さえない。
そのことに少々恨みがましいというか、納得できない思いを抱きつつも、順調に道を行く車窓を眺める。
埼玉県と明記された道路標識を通り過ぎ、インターを下りてから緑一色になった景色。
その鮮やかさに蘇るのは、昨日目にした場所。
――大丈夫
まるで全てわかっているとでも言うような、眼差し。
ネオンと自然光を吸い込んで輝くそれに感じたのはでも、ひどく覚えのある感覚だった。
毎日ああして見送っているのだろうか。
黄昏を吸ってさらに深みへと街が、沈んでいくのを。
『………』
眼下に広がる澄んだ色の川と、その側に点在するテントを写真に収めた時、合成音声が目的地が近いことを告げた。
"私有地"という看板がかかった木立の奥へと車を進ませて数分、急に開けた視界に降り注ぐ陽光は、サングラス越しにも眩しい。
ほとんど環境ホロの使われていない周辺を見渡しながら、どっしりと堅牢な3階立ての家に向かって歩を進める。
"雑賀"という表札の下の、インターフォンを押す。
<はい?>
『佐々山です。』
<ああ、ちょっと待ってね。>
穏やかな声がそう応えてすぐに、施錠する音がしてドアが開く。
『Sullivan教授からの預かり物を、お届けに来ました。』
下げていた頭を上げると、無精ひげを生やした男性が表情を緩めた。
「遠いとこ、よく来たね。まあ入んなさい。」
鞄からファイルを取り出そうとしていた手を止め、さっさと中へと戻っていくその背を見つめる。
「元気、彼?」
『…あ、はい!』
肩越しに振り返ったその顔に向かって頷きながら踏み出しかけた足を空中で止め、慌てて靴を脱いだ。
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