第四章
夢小説設定
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二
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――ホントに、オレが言ったやつにしたの?
思わずそう呟いた自分に、ひとつ目を瞬いた母の顔が柔らかく綻んだのを今でも、なんとなく思い出せる。
何もせずただ寝て、泣いて、笑っていたその生き物が立ち上がり、喋りだすまで。
中学卒業、専門進学と自分にもそれなりに色々とあったからかもしれないが、それは本当に、瞬く間だったような気がする。
ちょうど一回り年の離れた、妹。
――お兄ちゃん
初めてそんな風に呼ばれたその瞬間、悟った。
これは、駄目だと。
今となってはもう、あの時すでに自分の未来――つまり今は、決定されていたのだと思う。
それ自体が放つ光よりも、それの背後でじっとこちらを窺い、息を潜めているもの。
造りだされた、あるいは、造りだされるであろう、影。
そちらの方が良く、視えてしまっていた、自分には。
角度を変えたり隠れたりと、懸命に逃れようとしてみても尚、いつもそこに在り続けたそれはもしかしたらこの身の内に巣食うそれ、そのものだったのかもしれない。
それでも、自分が与えた名前を連れて日に日に大きく、輝度を増していくその存在を
――お兄ちゃん
全てを奪われて檻の中に放り込まれ、猟犬として飼われるように、なってからも。
「………」
火も点けずに銜えていた煙草を灰皿に放る。
今でも、笑うのだろうか。
あんな風に誰かを
見るのだろうか。
俺を――
「佐々山」
「あーはいはい。今行きますよっ、と。」
眉根を寄せて踵を返すのに、壁から背中を浮かせる。
未解決事件なんて珍しくもない。
そうピリピリせずとも、よかろうに。
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