第三章
夢小説設定
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三
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気づけば、引き寄せられるようにして大桟橋まで来ていた。
東京に比べて幾分和やかで開けた雰囲気を持つこの港町は、母が育った場所。
――今日も綺麗よ、光
色相計測装置をかざして微笑む、その姿。
――ママは?やんなくていいの?
あの日そう尋ねた私に頷いたあの、顔。
目にしたものを忘れることを許さないこの脳は、時に心にまで爪痕を、残していく。
消せないのならいっそ、無くなってしまえばいいのに。
無くせないのならせめて、取り替えられたらいいのに。
――ママはいいの
傷つけたくない。
そしてそれ以上に、傷つきたくない。
――いいのよ、もう
ここまでの道中で少しばかり質量を増した髪を、海風が優しく撫でていく。
それとなく流した視線に、大黒ふ頭のさらに奥の巨大で、歪な影が映る。
国内最大の廃棄区画――扇島。
かつての一大工業地帯は今や、存在しないモノとして扱われ、公式には無人となっている。
そして言うまでもなく公式には、と言うのは実状は異なっている、という意味だ。
[無い]筈の[在る]もの。
工場群からあがる黒煙が東京湾上に気怠るげにたなびく様を見ながら、デッキに体を預ける。
目的のひとつは、果たした。
そしてもう一件、埼玉の奥地に住むその人物との面会予定日は、明後日。
次など、あるかどうか分からない。
そう。
私だっていつ――
『………』
携帯端末で確認した明日の天気は、快晴。
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