第二章
夢小説設定
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二
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執行官を監視・使役し、職務遂行に務める。
新人研修施設でそう明確に職務内容を定義したあの教官は果たして、それが出来ていたのだろうか。
「いやマジ悪かったよ。まさかお前が青柳に気があるなんて知らなかったからさあー。」
「――んなんでそうなるっ」
「え、違うの?」
口を開くも何も言えないでいると、不思議そうにこちらを見ていた佐々山が、銜えていたタバコを指先で挟む。
「なんか馬鹿みたいに落ち込んでるもんだからてっきり…」
馬鹿みたい、という言葉にタバコを吹かすのを、睨みつける。
「~始末書の提出を命じる!」
「は、何でだよ!今の発言でか!?」
「違う!ブリーフィングすっぽかした件でだっ!!」
声を荒げた狡噛を、立ち話をしていた女性職員が驚いたように見やった。
罰の悪い思いで目を逸らす彼とは裏腹に佐々山は、笑顔でひらひらと彼女達に手を振る。
「………」
そもそも[監視]すら満足に出来ていないこの状況で、[使役]など可能な筈もなく。
入局当初には想像もしていなかった、理想と現実のギャップ。
それに悩み続けて早くも3年が、経とうとしていた。
尚も愛想を振りまき続ける佐々山に浮かんだ眉間の皺を指先で解し、口を開く。
「青柳さんの件については、いい。」
実際良くないがもう、そういうことにしよう。
自分のこの懊悩は今に始まったことではないし、くだらないプライドも、この男には関係の無い事だ。
「だが次からは俺かギノに言ってくれ。プライベートな用でも遠慮は「なんで。」
「いらないから」と続けようとしたのが遮られ、足を止める。
「…なんで…って……」
そのタレ気味の目に映る自分を見ながら、呟けば。
「お前らじゃヤだから頼んでんだろ。」
呆れたような口調に何も言えずにいると佐々山が、スーツの胸ポケットを探った。
取り出されたライターがカチッという小さな音をたて、タバコの先に、火が点る。
昔何かの本で目にした、副流煙が人体に及ぼす影響についての記述。
それに寄ればタバコとは、実際吸っている人間よりもその側にいる人間の方に、余程有害な代物らしい。
「んで、向こうも個人的にOKしてくれてんの。だからお前が気にする必要なんかどこにもないわけ。」
「お分かり?」と言って歩みを再開させたその背中に、慌てて足を踏み出す。
「おい待て!俺が言いたいのはそういうことじゃなくてだな――」
「お、とっつあーん。」
「佐々山っ」
ふらふらと先を行くその背中に声を、張り上げた。
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