第八話
夢小説設定
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「――今夜はまた、桜が奇麗ですねえ。」
開いた窓からこちらに差し伸ばされた枝先に、零れんばかりに開いた桜。
「毎日同じように咲いてるけどよ、奇麗に見えるかそうでないかは……見る側の都合かもしんねえな。」
同じように愛でながら、煙を吐く。
「同感です。」
不自然でも何でもない沈黙に、ある種の心地良さを感じるようになったのはいつからだったろう。
「捲簾」
「ん?」
「憶えてますか?」
窓枠に背を預け、新しい煙草に火を点ける。
「初めてお前さんと会った時の事か?」
「その話なら僕、あんまり憶えてないんですよねえ実は。」
「だってお前あン時寝惚けてただろ、明らかに。その話じゃあないとしたら……」
馴染みの蛙の灰皿に目を向け、記憶を探る。
「じゃアレだ、ウチの小隊全員引き連れて下界でこっそり焼肉パーティーした時の話。」
「ありましたねえそんな事。」
体を丸めるようにして笑った天蓬が、煙草をくゆらせながら視線を上向けた。
「あの時はまさか貴方が本当に僕に全部オゴらせるとは思ってもみませんでしたよ。15人分でしたっけ?しかも貴方、三人前は食べてたでしょう。焼肉屋の領収書なんて交際費でもオチるわけないし……ああ、思い出したらまた腹が立ってきた。」
「――オイ、じゃあ何の話よ?」
目線だけ動かして返答を待っていると、ややあって眼鏡越しに目を瞬かれる。
「なんでしょうね?」
「あのなぁ……」
思わず肩を落とすと、隣で空気が揺れる気配がした。