第弐話
夢小説設定
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「…おーい天蓬ー」
ゴンゴンと強めに扉を叩くが、応答はない。
「………まぁた何かトリップしてんじゃねぇのか?入るぞ天……うわ!?」
細く開いた戸を押す、内側からの力に身を引いた途端。
雪崩のように足元に落ちかかってきた書物やら巻き物やらから慌てて足を上げる。
「ひと月前に片付け手伝ったのにもうこの有り様かよ!?おい天蓬…!!」
「はい?」
踏み出そうとした足をそのままに、目線だけ移動させる。
狭いスペースに器用に体操座りをしながら本を開いてこちらを見上る男に、こめかみが引き攣った。
「~はい?じゃねーよ、何度読んだと思ってんだてめえ!?」
「ああスミマセン、全然気付きませんでした。」
「全然ってよ…」
「下界の戦史を繙き始めたら止まらなくなっちゃいまして。やはり戦とは人類そのものの姿ですね。その歴史に頻繁に現出する無思想という名の思想性が止揚というもおこがましい平和状態とのバランスを取り……「あのね、申し訳ないけど。」
苦労してやっと本棚の前にわずかな隙間を見つけ、そこへ避難する。
「お前さんの蘊蓄聞きに来たんじゃねぇのよ。」
天蓬が背を預けた机の上、正確には本の塔の上に載っている白衣に目をやりながら手近な本を拾い上げる。
「哪吒太子が牛魔王討伐から帰ってきたぜ。」
「――また随分と早いですね、上層部があれだけ慎重に動いてたのに。」
灰が本に落ちるのは平気なのか、という疑問はさておく。
「流石の哪吒も今回ばかりはかなりの深手を負ったみてぇだな…まだ意識不明だと。ただよ、ひとつさ気になったのが、一緒に出陣してた兵士達はみーんな無傷だったって事だ。」
「……全て殺人人形に頼りっきり…というわけですね…」
声の調子は変わっていないが。
吐かれた煙が逃げるように、窓の方へと流れていった。