春よ来い
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……何してんですか、貴方たち。」
「おう、どうだった!?」
カァンという小気味よい音が、連続して辺りに満ちる。
「またどうせ後処理班だろォ――っと!」
『随分余裕がおありのようですねっ』
黒衣の焔珠が、捲簾の長身を押し返す。
「~っ!!」
少なからず複雑な気分でその勝負の行方を見届け、軽く手を打ち合わせた。
「そこまで。」
跳ねるように身を起こした焔珠が、活き活きとした笑みを浮かべながら手を差し伸べる。
『もしも貴方が大将を解任されるようなことがあれば、いつでも私が代わりを務めて差し上げますからね。』
「そりゃ、頼もしいこって。」
苦笑しながら起き上がった捲簾と目が合うと、その顔に不思議そうな表情が浮かんだ。
「何?」
「………いいえ、別に。」
『お勤め御苦労さまにございます。』
袖を捲りながら近寄ってきた焔珠に、溜息を吐く。
「またどうしてそんな恰好を……?」
「いやちょっとそこで会ったから誘ったんだけど稽古するには、な。」
『まぁ、随分控えめな表現をなさるのね。』
明後日の方向を向いた捲簾に咎めるような視線を送った焔珠が、こちらを向いて口元を緩めた。
『こんなことを言っては東方軍の方に叱られてしまうかもしれないけれど、西方軍の軍服の方が素敵ですね。』
汗で額にはりついた前髪を払ってやると、ほんのりとその顔に朱が刷かれる。
捲簾が居てくれることに心底、感謝した。
「似合っていますよ、よく。」
『そうですか?』
「ええ。」
恥ずかしげに目を伏せた焔珠が、所在なげに緋炎を撫でた。
「なんつーか、こお……春だねぇ。」
「春ですかねぇ。」
「どうなの焔珠、春なの?」
『?ここはいつも春です。』
ひらひらと散っていく花弁が、真顔で言い放った焔珠との間を通っていく。
「「………。」」
「そうですよね、いつも春ですよね。」
「スマン…俺が悪かった。おい泣くな。」
『?』