好きな人が好きなモノは、好き
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『面白くはありませんが、如何してかはわかるような気が致します。』
「はァ?」
『言うではありませんか、好いた方がお好きなものは……まぁそうでなくとも貴方のことは素直に…』
こちらを向いた捲簾に、口をつぐむ。
「素直に?」
骨ばった指が髪に伸びてくるのを察し、その手が届く距離から逃れる。
『何か?』
「………焔珠」
『ですから何か?』
「続きが聞きたい。」
真摯な声音に明後日の方を向くと、柔らかく光る星がひとつ瞬く。
低い笑い声を背中に聞きながら、今私はどんな顔をしているのか、見当もつかない。
ややあって止んだそれを不審に思って視線をやり、後悔した。
さっきまでとは別人のような熱っぽい眼差しに、囚われそうになる。
『け……』
喉に引っかかった言葉が不明瞭なただの音になった瞬間、その顔に悪戯っぽい笑みが浮かんだ。
煙草の匂いが鼻腔に絡みつき、耳の近くに触れた湿り気に首を竦める。
『――何を…っ』
薄い唇が弧を描くのを見て、顔に熱が集まってくるのがわかった。
「ははっ。」
笑うその顔に浮かぶ表情に何も言えず、俯いたまま腰の緋炎に手をかける。
『命が惜しければ、即刻立ち去りなさい。』
「へいへいすいませんでした調子に乗りましたー。じゃーなっ」
手摺に飛び乗った長身が、音もたてずに草地に着地する。
夜闇に溶けていく背中を追うことはせず、欄干に腰を下ろす。
『……馬鹿。』
残る香りを締め出すように、目を閉じた。