最終話
夢小説設定
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「――観世音菩薩」
開け放したままの戸の向こうから近づいてくる足音に、顔を上げる。
その僅かな動作だけで鳴った首に、意思とは関係なく肩が下がった。
「そろそろお支度なさらないと、本日の集会に間に合いませんぞ!!」
「……毎回毎回面倒なこった。こっちも始末書やら報告書やらで手一杯だってのに。」
「~何を仰いますやらババシャツ姿で…危うくもっと大事になる処だったんですぞ!?」
惨状を嘆いて息を吐くと、二郎神が引き攣らせながら顰めるという器用な顔芸をやってみせる。
「李塔天の悪しき目論見や所業を竜王敖潤殿が上層部に告発して下さった事で、天帝の弑逆罪は金蟬童子らの無実――ひいては観世音菩薩の責任追及を免れましたが、悟空……いや[斉天大聖]が天帝城で行った大量虐殺という事実までは拭えませんからなあ……」
「俺の責任なんざどうだっていいさ。ただ今は――」
色が無くなり、ずいぶんと白っちゃけた窓外の景色
「独り遺されたあのチビが下界でどうしているだろうかってな……」
最後に見た、淡い色に混じる緋炎の華を、そこに視たような気がして。
「……今更ながら、解った気が致しました。」
ぽつりと呟いた二郎神を、無言で見つめる。
あの日、「私にも聴こえました」と、透明な声で呟いた彼の表情を、思い出して。
「何故あのお方が焔の名を夜叉王様より与えられたのか。」
「………本当に」
再び窓外に向けた目の片隅で、陽が踊る。
「今更だな…」