第八話
夢小説設定
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触れる度零れては風に浚われていく小さな声さえ、惜しくて。
窓枠に押し付けた身体をさらに強く、抱きすくめた。
「焔珠」
掌に伝わる柔らかな感触と、甘い香りにすがるように何度も、何度も。
『せ…んっ』
塞いだ唇を離して、乱れた髪を耳にかけ直す。
その時になって初めて、焔珠が自分の眼鏡を持っている事に気付いた。
「名前で呼んでみて下さい。」
『い、嫌です。』
思いがけない返答に目を瞬き、次いで笑う。
「またどうして?」
『嫌だからです。』
挑むように見上げてくる濡れた漆黒にもう一度笑い、その近くに口づけを落とす。
「もうひとつ聞いても?」
『…どうぞ。』
「何を、憶えていて欲しいですか?」
『え?』
大きな瞳に映る自分は、とても穏やかな顔をしていた。
「貴女の何を、僕に憶えていて欲しいですか?」
『………全部』
「はい?」
『全部は、無理ですか。』
応える代わりに、顔を近づける。
舞い散る薄紅と同じ香りが、身体を抱いた。
続