第八話
夢小説設定
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何も言わずに出ていった捲簾の背を見送っていると、名を呼ばれた。
窓際に佇む先生の向こうに見える薄闇に舞う淡い色は、見慣れたものである筈なのに何故かとても美しく見えて。
「どうしました?」
『いえ』
首を振って止めていた歩を進め、窓枠に手を触れる。
『ただ今夜は、桜が奇麗だなと思って。』
「貴女には及びませんよ。」
『~またそんな事を……』
優しい眼差しに声を失い、目を伏せる。
「焔珠」
『……はい』
「顔を上げて下さい。」
鳴り響く心音をやっとなんとかした時、顎を掬われた。
「スミマセン、せっかちで。」
降りかかってきた重さを伴う香りは慣れたものと、少し違う。
――先生の匂い
そう気づいて目の端が熱を帯びた頃、ゆっくりと、薄い唇が離れていった。
言葉を発することなくこちらを見つめる先生の瞳の奥にある感情と、自分が今抱いているそれは多分きっと、同じ。
宥めるように額を撫でた奇麗な手が頬に触れ、熱い吐息が耳を撫でる。
『……ふ…っ』
首筋を啄ばんだ痺れるような甘い痛みに、身体が、震えた。
『せ…んせ…』