第6話 Misty
夢小説設定
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『気がつきましたか。』
上げた掌を凝視している自分に遠慮するように、少しの間をおいてかけられた声に視線を向ける。
待っていた柔和な笑みに、絶えず響く微かな音がふ、と空気に溶けるように散っていくのを感じた。
『人を治してご自分が倒れてしまうなんて、本末転倒と言うものですよ。』
「……ここは……」
『あれから半日程しか経っていません。まだ森の中です。』
「そう…ですか」と身を起こそうとすると腕が伸びてきて、助けてくれる。
白く細い指先から伝わるひんやりとした温度が、未だよく機能していない思考を心地良い感触で今に、引き戻していく。
『綺麗ですね。』
「え?」
『手』と続けた唇が解れ、笑みの形をとる。
『男の人に言う言葉ではないのかもしれませんが、綺麗だなぁと思って。』
差し出されたカップを受け取れずにいると、大きな瞳が問うように瞬く。
「あ、いえ…――すみません。」
謝罪を口にした自分を映している漆黒を一体
「………」
どのくらいの間、見つめていただろう。
失った大切なものの、その人との穏やかな時間の炯がそこを今
過ぎったような気がして。