序章 Go to the West
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『紅春炯、只今帰還致しました。』
純度の高い日差しが零れる広間で膝をついた女が頭を垂れた。
その動きに合わせて絹糸のような黒髪が、揺れる。
「よく戻った。」
「荷も解かぬうちから…急いてすまぬな。」
労わりに満ちた声にその顔が上げられた、瞬間だった。
深く澄んだ黒で満たされた瞳はどこまでも優しく、柔らかく
何ひとつ変わらないその眼差しはだが、久方ぶりに目にするせいか眩むほど鮮烈にして、苛烈ですらあった。
「事は一刻を争うのです、春炯。」
言に顎を引いて目を伏せたその面差しが、曇る。
『……西方より生まれ出でた波、よもやここまで早急に広がろうとは……』
「うむ…」
『今や桃源郷とは名ばかり。慶雲院からここ斜陽殿までの道中でも…さながら地獄絵図の様でございました。』
そのくせ、一拍置いていずまいを正して再び面を上げるまでの一連の動作の潔さと言ったら。
『心身共、務めを果たす用意は出来ております。』
『どうぞご下命を。』と先よりも深く頭を垂れる様に苦しそうな、あるいは辛そうな顔をして見るコイツらにコイツを預けた会ったこともない男の判断はきっと、正しかったんだろう。
「勇ましいこった。」
衣擦れの音を響かせる前よりこちらに向けられた視線に自ずと唇が、吊り上がる。
「………よォ。」