序章 Go to the West
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『………』
風の吹いてきた方へと視線を流すと、空が見えた。
抜けるように蒼く、高い、空。
ほんの数時間前までの豪雨が嘘のようなその眺めはこれまでにも何度も、目にしているものだけれど。
蒼を透かしてかかる雲に目を細めて、手をかざす。
雨の夜の苦手な誰かさんの、”嫌いじゃない”モノ。
「春炯様!」
呼びかけに階上を見上げると、知った顔がこちらを見下ろしていた。
あくまで見かけた事がある、というだけで名前は知らないその人に体ごと向き直る。
「お待ちしておりました。三仏神様がお待ちです!」
言外に急ぐことを要求しているその声音に肩越しに振り返り、腕を伸ばす。
『おいで、緋炎。』
すうっと空を切って定位置に落ち着いた相棒の頭を撫で、歩みを再開させる。
「お勤めご苦労様にございます、春炯様。」
最上段に足をかけた途端走り寄ってくるのに微笑を誘われながら、フードを下ろす。
『良いお天気ですね。』
「は…?」と目を瞬くのに立ち位置を変え、『ほら』と天を指し示す。
『雲ひとつなく…はないですけど。』
考え込むような、というよりも不審そうな顔をされてしまったので名前を聞くのはまた、次回にすることに決めた。
『では』と頭を下げて足を踏み出し、「はいっ」と慌ててあけられた道を行く。
重厚な音をたてて左右に開かれていく扉を眺めながら、息を吐く。
『……お腹すいたなぁ。』