第38話 Be lackig
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がらんとした空間に聳える、朱塗りの一本の柱。
そこに在る女性を見上げている後姿をこれまで、幾度となく見てきた。
でも――
呼びかけに振り返ったその貌は、確かに主のそれだ。
微かな違和感を、激情がたちまちの内に、呑みこんでしまう程に。
「紅孩児様、御無事で…!!」
「もう怪我は平気なのか?おま…
独角兕が伸ばした手が、音を立てて弾かれる。
「紅…「触れるな」
<無闇に触らない方がいいよー殺されちゃうから。>
「……!どういう事…!?」
「おい紅…紅ッ!!どうしちまったんだお前!!?」
呼びかけに一切の反応がないのに、ざわりとしたものが背中を、這い上がっていく。
「 你健一ッてめぇ紅に何しやがった…!!」
<やだなあ人聞きの悪い>と笑いを含んだ声が、高い天井をひび割れて落ちてくる。
<ボクはちょっとした人助けのつもりなんだけどね。>
「人助けだと?ザけてんじゃねえよ!!紅を…コイツを元通りにしやがれ!!」
目の前の紅孩児様は確かに、こちらを映しているのに。
その眼差しを見返しながら自分の呼吸が、浅くなっている事に今になって気がつく。
<元の?ああ、孫悟空ひとり殺す事も出来なかった弱い彼に?>
「てめ…ッ」
<彼が求めたのはより強い力でしょ。その妨げとなっていたのは、彼自身の脆弱なココロ――君達だって判ってたんでしょ?>
言葉を失って立つ独角兕を見る紅の瞳はまるで、よく出来た装飾品のようにただ
美しく、そこに在る。
<第一、君のその執着は誰に向けてのものなのかな。そこにる王子様?それとも>
嘲りも、揶揄すらも含まない声が、滔々と無機質な空間に響き渡る。
<虐待受けてまで愛情を求めた弟を救えずに、あまつさえ母親と通じてしまった過去への贖罪のつもりかな――
“沙爾燕”>