第36話 Wish
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「…あのガキが立ち去るまでは意識を保っていられた」
自身の掌に目を落として言った三蔵が、ベッドに横たわる春炯を見ながら煙を吐く。
「だから俺だけ無事だった。」
「…どーゆーコトだそりゃ」
「身体から意識を離脱させ、精神だけを吸収する……つまり今そこにいるソイツ等は魂を吸い出された抜け殻という事になる。」
「――じゃあ完全に死んじまったワケじゃねぇんだな!?」
「恐らくな。だが断言はできん。時間が経てばそれだけ危険かもしれねェし。」
最後まで聞かずに椅子の背にかけてあった上着を引っ掴み、踵を返す。
「おい、何処へ行くつもりだ。」
「自分のケツ拭いにだよ。」
肩越しに振り返り、無感動にこちらを映す紫暗の瞳を見返す。
「あのガキとっ捕まえなきゃ何も始まんねぇ。追いかける為の手がかりを探すんだ。」
並んで眠る悟空と八戒と、ついさっき別れたばかりの春炯を見やる。
怒気を漲らせて去って行く後姿と、表情の抜け落ちたその顔の落差が割と深刻にキツイ。
ひとつ息を吐いて気を取り直し、ドアに手をかけると静止が背にぶつかった。
「俺も行く。」
「さん…「貴様に任せるとロクな事にならんからな。」
はああと見せつける様な溜息を零しながら、横を通っていくのにこめかみが引き攣る。
「………」
「さっさと行くぞ。」
「…蠍座は厄日か?」
**********
「子供と化け物?」
グラスを拭いていたマスターが、肩眉を上げた。
「ああ…子どもは知らんが、化け物の話ならよく聞くね。この町の裏手に山があるだろ?一年程前からそこの森にでっかい化け物が出没するってウワサでね。」
「被害は出てるのか?」
琥珀色の液体を傾けながら問うた三蔵は勿論思いっきり法衣なので、やや引いたような眼差しで気の良さそうな頭が横に振られる。
「いや、化け物に襲われたって話は聞いてないねえ。ただ…ここ数か月町の人間が変死する事が多くてね。」
「…変死?」
「外傷は大した事ねえのによ、魂抜け落ちたみたいに死んじまってんだな。――死んだ人間を悪く言うのも何だけどここだけの話、変死した奴らは皆、町で煙たがられてたような連中ばかりでな。仏罰が下ったなんて言われてるもんさ。」