第35話 華焔の残夢4
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鈍い音が耳に届き、閉じていた目を開ける。
「……あ…」
漏れたのは紛れもなく、安堵だった。
力任せに叩きつけた如意棒の先端は、金の髪を掠めて背後の木に突き刺さっている。
強張った指を引きはがし、よろよろと後ずさる。
「…も…嫌だ……ッ」
膝から崩れる様にして蹲ると、殺せと頭に響く声と、殺したくないと内側から悲鳴をあげる心に圧し潰されて身動きがとれなくなる。
「悟空」
その声に縋るようにのろのろと顔を上げれば
差し伸べられた手と、感情の窺えない濃い夜の色をした双眸にぶつかる。
かつて自分が太陽だと思っていた、月の光にも似た輝き。
強烈な既視感が風のように前髪をそよがせる。
「…とっとと戻ってこい。」
ぎこちなく伸ばした手で、触れた指先を縋るようにきつく握る。
俯き、目を閉じて
「――――三蔵」
深い息と共に、もう何年も口にしていなかったような気がする名を、呟く。
「悟空」
「…――いっ てええぇー!!」
脳天を襲った衝撃と、余韻を残して木霊す高い音に目を瞑る。
「~何すんだよいきなりッ!!」
「他のヤツはどうでもいいが俺にだけは世話かけさすなっていつも言ってんだろうがこのバカ猿!!」
『……なんていうか…』
叩かれたところ抑えながら涙目で周囲を見回せば、春炯が肩を落とした。
「彼等…ですねぇ…」
「……さて、と。まァじゃ不良品の返品も済んだところで。」
こちらをじっと見ている芙蓉に、錫杖を肩に担ぎなおした悟浄が向き直る。
「あとはアンタだけだ。」
「ちょちょっと待てよ!悟浄っ!!」