第35話 華焔の残夢4
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瞬間、その顔に浮かんだ艶やかな花のような笑みに、内心で驚く。
「耶昂を育てます。」
「莉炯」と情けない声で名を呼んだ悟浄を見つめ返すその瞳は確かに、先ほどまで自分が話をしていた少女のそれなのに。
女とはやはり、不可思議なものだと思う。
「悟空さんに伝えて下さい。私、頑張って耶昂を悟浄さんみたいな人に育てますって。」
「…それは止めた方がいい。」
『それはちょっとどうかしら。』
目を見合わせると、春炯の隣に立つ八戒が口元を抑えた。
「あ゛ァ?そりゃどーゆー意味だ?」
「言葉通りに決まってンだろ。」
「適当なところで止めといて下さいね、2人とも。」
そう言って莉炯に向き直り、もう一度頭を下げた八戒に、春炯が続く。
気遣うような視線が自分を通り越して向けられるのを認め、その背を追って戸口をくぐった。
雲の切れ間から覗く蒼天から降る日差しから逃げる様に、壁に背をつけて袂を探る。
「一体、莉炯にどんな術をかけたんですか?」
反対の壁に寄りかかっていた八戒の、何故か微かな笑みを含んだ顔を見やり、煙草に火を点ける。
吐いた煙が、ゆるゆると漂うのを眺めながらようやく、辺り憚らず吸えるようになるなとなんとはなしに思った。
「別に。」
「何も」と続けると、その顔に浮かぶ笑みが苦笑に変わる。
「何も…ですか。」
『でも莉炯、綺麗になったよね。』
『三蔵効果かはさておき』と付け足した春炯に、八戒が腕組みをして顎を引く。
「女性ってある日突然、急に変わりますからねぇ…」
「…見てきたような物言いだな。」
「今見たばかりでしょう、貴方も」と言われて初めて、得心する。
…成程、確かに。
「…何々、何のハナシ?」
割って入ってきた悟浄を見やり、壁から背を浮かせる。
「なァ、なんの話してたんだよ?」
「女性の神秘についてのハナシですよ。」