第35話 華焔の残夢4
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「ったく、ロクな亊言わねーな。なんで俺が妖怪の相手なんざしなきゃなんだ。」
「あの場合、他にどーしよもねェだろが。大体お前が全っ然坊主らしくねーのが悪いんだろ。」
どうにか騒ぎを収めたらしい三蔵と悟浄が、室内に入ってくる。
「どーせ悟空の事だってあるんだし…」
言葉を切った悟浄がこちらを見やり、舌打ちを堪えたように視線を逸らす。
掌の下の細い肩は、震えを伴ったままだ。
「……本当のコト…教えて、下さい…」
覚束ない足取りで歩み寄り、伸ばされた腕に春炯がむずかる耶昂をそっと戻す。
「私と、耶昂の問題なんです」と三蔵を見上げた両眼が、その小さな身体に、縋るように。
「……聞こえていただろう、さっき言った通りだ。」
静かな言葉に、まるで子供のように莉炯が頭を振る。
「やめて!優しい嘘なんて…そんなの欲しくないッ!!」
嘘だと、はっきりと言い切るのに紫暗の両眼がごく僅かに細くなる。
「………そこまで言うからには、確信があるんだな。」
「三蔵!」
「耶昂が妖怪との混血児かもしれない出来事があった。そうだな?」
「いい加減にしろよ、三蔵!!」
悟浄が三蔵の着物の合わせを掴み取り、捩じ上げる。
「…悟浄」
「やめてっ!」
縋るように莉炯に腕を掴まれた悟浄が、ややあって腕を下す。
行き場をなくした感情を呑みこんだ横顔に知らず、目を伏せた。
「三蔵さんの言うとおりです。たった一度…一度だけ……決して望んだワケじゃありません。姉は、それで死のうとまでしたんです…!」
気丈に堪えていた涙が、一筋頬を伝う。
莉炯が嗚咽をいなして自らの呼吸を収める音だけが、室内に響く。
「……本当の事を、教えて下さい。」
再び懇願するその口調が、耳を打つ。
確定事項を、わざわざ他人の口から肯定して欲しいと願うのは、彼女なりのけじめなのだろう。
知らせるにしても、もう少し穏便に持っていく方法はいくらもあった筈なのに。