第35話 華焔の残夢4
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「聞くに堪えんな。」
不快気に片耳に手を添えていた三蔵が、慣れた手つきでセーフティを解除する。
「めんどくせェ!!全滅させて死体の山からその首探してやる――」
単純に考えて、これだけの瓦礫の中から首ひとつ見つけ出すのはそれなりに時間と労力がかかると思うのだが。
自我の崩壊――というよりも、理性の欠如がやはり先に来ているという事だろう。
再び爆弾を手にし、歪んだように哂いながら指を擦り合わせようとした男の顔が、瞬間色を失う。
指を伝う鮮烈な赤が、その向こうの霞ががった青空に対して美しくもないコントラストを生み出す。
「おっ、俺の指がああアあっ」
三分の一ほどの長さになった指を左手で押さえたその口から、悲鳴交じりの絶叫が漏れる。
「相変わらず、狙いを外しませんね。」
殺伐とした場にそぐわぬ声が届いたのか、血走った男の眼がようやくこちらを向く。
「――貴様、玄奘三蔵かっ」
「よーやく見つけて頂いたようだぜ?銃声も聞こえない程馬鹿笑いしてたおにーサンに。」
激痛と怒りに淀んだ瞳が見開かれ、一投足で距離を縮めたその体が影を差す。
渾身の力で振り下ろされた刃先を銃身で受けた三蔵に、背後の莉炯が音を立てて息を呑んだ。
離れる隙を与えずその腹部を右膝で蹴り上げれられた男が、低く呻いて崩れ落ちる。
ゲホゲホと咳き込み、視線だけを向けられた三蔵の両眼には、なんの感もない。
「…い、いい気になるなよ……紅孩児様に逆らうヤツは皆死ぬんだ……」
「そうか」
銜え煙草でハンマーを起こしたその手が、無造作に照準を定める。
「とりあえず、今はお前だ。」
ガゥンと空気を震わせるのが合図だったかのように、残りの妖怪が文字通り一気に跳んでくる。
「~こっちはお手当なしのタダ働きなんだぜ?」
「ツケですよ、悟浄」
労力を惜しんでか、最小限の動きで攻撃をかわす様を横目に、至近から繰り出された拳を掌底で払い右足でひとりの顎先を蹴り上げた。
「ツケですよ、悟浄。後であちらの大ボスに請求書を渡せばいいんです。」
「きゃ」
八戒が数人を薙ぎ払った衝撃波の圧に、小さく悲鳴を上げた莉炯を振り向く。
『り――莉炯っ』
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