第35話 華焔の残夢4
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「――ッなんだァ?」
腹の底に響く重低音に、跳ね起きる。
ガタガタと小刻みに揺れる窓枠の音に被せて、座しているベッドも今足をつけた床も、震える様に揺れている。
その揺れが収まりきらない内に、再び全身を重低音が襲う。
だがそこに微かに交る異質な気配を、今度は捉える。
人間には到底発しえない――妖気。
「………」
身支度を整えた三蔵が立ち上がり、扉の方へと歩き出すのを見ながら、放ってあった上着を片手手にその後を追う。
玄関はすでに開けられており、その向こうには耶昂を抱いた莉炯が、そして2人を庇うように八戒と春炯の姿がある。
「…何事だ、朝っぱらから…」
億劫そうに頭を掻きながら言う三蔵に、無造作に髪を結わいた春炯が視線だけを投げる。
「ここにいるのは分かってるんだ!隠れてないで姿を現せ!!玄奘三蔵!!」
『…だそうよ。』
細い路地を挟んだ向かい側。
横に三件ほど数えた辺りの家々が、原形を止めていない。
舞い上がる粉塵に混じって流れてくる、錆びた鉄の匂い。
「朝もはよからご苦労なこった。」
こちらに背を向け、通りの反対側に向かって叫ぶ男の後姿を見ながら、髪をかき上げる。
「あちらさんは早朝手当とかつくんじゃないですか、きっと?」
「じゃ人数が少ないのは?あちらさんがバイト代をケチったからか?」
目視できる範囲に、それらしい影は十に満たない。
ここ最近の襲撃時の、およそ5割減といったところ。
「怖気づいたか玄奘三蔵!?出てこないのなら、これをもう一発使うぞ!」
見せつける様に掲げられた腕。
右手に握られた黒色の球体に、目を眇める。
そのまま人差し指と中指に嵌められている灰褐色の鈍色のリングを、男が器用に擦り合わせる。
瞬間生まれる小さな火花が、導火線へと引火し、手から離れた爆弾が、轟音と共に瓦礫を増やしていく。
そこかしこから上がる悲鳴。
濃くなった血の匂いに酔ったように、耳障りな嘲笑が煙る周囲で高低様々に響いた。