第34話 華焔の残夢3
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
はぐれた髪にふと目をやった瞬間、静かに凪いだ湖を思わせる色と間近でぶつかる。
「…っえ…と…!」
謎に空中で手をとられて驚いたが、慌てふためく様につい声が出た。
『…ごめんなさい、髪が邪魔だったから』
笑いを収めながら引こうとした手が、ぎゅっと握られる。
『…?八戒…?』
真っすぐにこちらを見る視線と、込められた力の強さを不思議に思って問うように呼ぶと、ふっとその顔が緩んだ。
「おしまいですか?」
「もう」と続くのに、足元に目を落とす。
『うん。もう完成というか…明日の朝にまた水やりしておしまいかな。』
「そうですか。じゃあ、もう戻りましょう。」
いつの間にか少しだけ弱くなった握る力はでも、何故か離すまでには至らなくて。
『…うん』
そのまま手を引かれ、歩き出す。
『………』
家に入り、八戒が先ほどまで眠っていたリビングを通り過ぎ、莉炯と耶昂の眠る部屋の前まで行き着いても。
『…………あの、八戒…』
解かれない指に内心で首を傾げながら、その顔を見上げる。
「はい」
『…起こしてごめんなさい。』
「いえ。戻ってこないなと思ったのは本当なんですが、僕が過干渉気味なのかもしれません。」
『………?……うん……?』
疑問符が飛び交う中、目線を落としてやんわりとその指から逃れるようにすると、想像していたよりも呆気なくその手が離れる。
「春炯」
『はい』
不自然に大きくなってしまった声に、八戒が唇の前に指を立てて笑んだ。
「おやすみなさい。」
非の打ちどころのない柔らかな笑みに、なんとなく気後れを感じながら顎を引く。
『…おやすみ。』
同年代の異性の友人とは、かくも分からないものなのだろうか。
Next page あとがき