第34話 華焔の残夢3
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ドアを開けると、寝ていると思っていた悟浄がベッドの上で煙草を燻らせていた。
高い位置から注がれる月光を浴びた中で、その眼だけがこちらを向く。
「何、お見舞い?」
「なわけねェだろ、寝るんだよ。」
間髪入れずに応えながら、自身の寝床に向かう。
「八戒は?」
「向こうで寝るそうだ。」
「…ひっさびさに二日酔い気分を味わったぜ。二度目は遠慮したいトコだけど、どうするか決まったか?」
荷物の中から煙草を取り出し、火を点ける。
煙を吐き出しながら窓外に目をやると、切った爪の様な月が静かに在った。
「動けるようになってから聞けっつったのはお前だろ?っつーか…なにらしくなく考え込んでんだよ?あのバカ猿返品してもらって妖怪はぶっ倒す。それでいいじゃねェか。」
「八戒はあちらさんにだいぶ同情的だったが?」
「八戒は、だろ?」
「あっちもこっちも丸く収める都合のいい解決法なんかないんだぜ?」
「あるだろ」
「ハ?」と間の抜けた声に、顔を向ける。
「現状維持だ。」
読み取りがたい表情から視線を外し、溜まった灰を手近くの空き缶の飲み口から落とす。
「悟空を自分の子どもとして手元に置いている限り、妖怪は大人しくしてるだろう。この町の騒動もなくなる。めでたし、めでたしだ。」
「お前じゃないがな」と付け加え、再び煙草を咥え直す。
「おいおい、悟空の意志は無視かよ?」
「親子として暮らすのも、悪くねェだろ。」
「…アイツの口から親が欲しいなんて、聞いたことねーよ。」
「やめとけ」と、聞き逃しそうな程に、低い呟き。
無論冗談だ。
今ここで悟空の力を削る事は当然出来ないし、この町の連中がどうなろうと知った事ではない。
けれど
では何故こんな無意味な戯れを口にしたのかと言うと、よく分からない。
「迷うなら、たまには俺にも決定権ちょーだい。あのおねーさんと、もう一度話し合いたいし。」