第34話 華焔の残夢3
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「お前のことだ。気づいたなら、早々に忠告なりしたんだろ?」
「ええ…まぁ、そうなんですけど……」
無言の圧力に抗いきれず、困り果てて口を開く。
「あの時、僕が突然呼吸を止める様に言ったんで…」
「で?」
「驚いて思いっきり息を吸っちゃったみたいなんです。」
後ろ頭をかきながら言うと、こちらを見つめていた三蔵と春炯の顔に一拍分、同じような表情が浮かぶ。
こういう時、この二人は根は同じくらい素直で純粋なんだろうと思わせられる。
両者とも、自分の想像を越えていく現実に耐性がない…というワケではなく単純に経験が乏しいのだろう。
「正真正銘、救いようのない馬鹿だな。」
そう呟いた三蔵に、春炯が驚きを引きずったまま眉根を下げるのを見て、あははと笑う。
「ところで、これからどう動きます?僕は聞く権利ありますよね。」
わざわざ揚げ足を取るように尋ねると、三蔵が黙したまま眉を顰めた。
パタパタと軽い足音を引き連れて戻ってきた莉炯が、「あら」とこちらを見つめる。
『一足先に、休ませてもらったわ。』
「悟浄さん、具合が悪かったんですか?」
生じた間に、「あの、昨日も一昨日も悟浄さん相当遅くまで起きてたみたいでしたから…」と釈明するように言ったその眉が、下がる。
「…違いました?」
緩く首を振って肯定を示した春炯が『箒、ありがとう』と立ち上がる。
「あ、私やります。それより悟浄さん大丈夫ですか?私、全然気がつかなくて…」
「莉炯さんが気にする事ないですよ。悟浄は気づかれたくなくて、そうしてたんですから。」
だから、莉炯に非はないと笑いかける。
実際その成果は中々の物だったけれど、相手が悪かった。
ごく僅かに急いて上滑る言葉に時折鈍く、滞る仕草。
それらに気づかない2人ではない。
「そんなワケなんで、もう一晩ここにお世話になりたいのですが…」
三蔵の意志を確認するまでもなく、他に道がないのだ。
「勿論です。お夕飯も出来てますし、そうして下さい。」
二つ返事で受け入れてくれた莉炯に、頭を下げる。
『…ありがとう。』