第34話 華焔の残夢3
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「それは復讐される側の、勝手な見解でしょう?」
ぽつりと吐き出された感情のない声に、視線を流す。
俯かせていた顔を上げた莉炯を見やる八戒の顔に浮かぶ、微笑は
「貴女の言う通り、復讐なんてしても悲しみは消えない。でも、そうと分かっていてもやらずにはいられない時もあるんです。」
触れられそうな程に、冷たい。
ガシャン
『ゴメン、莉炯』
四対の視線を感じながら、椅子を引いて膝を折った。
『引っ掛けちゃったみたい。』
指先を伸ばし、大小の破片と化して散らばったカップのひとつを拾い上げる。
「あ、春炯さん。待って。危ないから私がやります。」
箒を持ってこようと莉炯がリビングから出ていくのを見送りながら立ち上がると、「春炯」と硬い声で名を呼ばれた。
「すみません。」
口元だけで笑って返すと、黙ってこちらを見上げていた悟浄が三蔵を振り返る。
「で、これからどう動く?悟空放っとくワケにもいかねーだろ?」
「いい加減目障りだ。」
容赦のない一言に、息を吐く。
「…どーゆー意味だよ。」
眉根を寄せつつも、本心から首を傾げている悟浄の横顔を見下ろしていると、その向こうの八戒が困ったような笑みを覗かせる。
「とうとう自分の状態が分からない程、馬鹿になったのか?」
面倒臭そうに袂を合わせた三蔵が、足を組み替える。
「どう動くか聞くのは、せめてどう動いても大丈夫なようになってからにするんだな。」
ぐっ、と押し黙った悟浄が八戒を次いで、自分を再び見上げる。
あまり人付き合いがないせいで、こういう時どんな顔をするのが正解か分からずに、[目を逸らす]という一番不正解っぽいものを選んでしまう。
「………分かった、わっかりました。」
両手を上げて降参の意を示し、ベッドの置かれている部屋の方へと歩き出す背中を見ていると、扉に手をかけた所で振り返った切れ長の眼が自分以外の2人を交互に見る。
「俺のいない内に、パーティー始めンじゃねぇぞ。」
軽口で包まれた本音を置き去りに、ドアの閉まる音が空気に紛れて消えた頃。
「…不思議に思ったんだが、お前ら同じ状況にいたんだろ?」
「原因は薬だと思うんですけど、その粉を僕はほとんど吸い込みませんでしたから。」