第34話 華焔の残夢3
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好奇と畏怖の入り混じった視線が、神経をチリチリと刺激する。
他人の目をいちいち気にする程細い神経は持ち合わせていないつもりだが、それが長時間にも渡れば足取りも鈍くなるというものだ。
半日以上の時間をかけてこれまで人質の要求を受けた尋ねて回ったが、結果は全て空振り。
春炯の方も、恐らく似たようなものだろう。
三軒中門前払いが二軒。
残る一軒でも、こちらの話に応じる者はなかった。
――あんな妖怪、放っとけばよかったんだっ!
耳に残る、ヒステリックな女の声。
桃源郷の妖怪全部が狂っちまってるんだ…子どもひとり殺したところで何が変わるワケでもないってのに…っ
放っておけば、こんなことには……!
「………」
[子ども]
それだけでも、現状と照らし合わせれば一つの仮説を導き出す因子にはなり得る。
あくまで只の仮定なのか、それとも真実を射ているのか。
そこをはっきりさせる為に、ひとつの扉の前で足を止める。
まだ日の高い内だというのに、聞こえてくる飲み屋特有の喧騒に眉根を顰める。
酒を飲むこと自体は苦手ではないし、嫌いなワケでもない。
ただ店に入ったとして、一見してそれと分かる法衣と、この国では珍しい部類に入る髪の色のせいで否応なく人目を引くのは分かりきっている。
言い寄ってくる女もいれば、何を勘違いしてか絡んでくる男まで。
どれを取っても煩わしい以外の何物でもないが、今は必要性があるから仕方ない。
息を吐いて軽い扉を押し開くと、店の主人らしき男と幾人かの視線が無遠慮に投げかけられる。
煙草の煙でぼやけた店内をゆっくりと見回すと、店の最奥のテーブルを陣取っている一団に目が留まった。
一昨日の騒ぎの時、中心にいた無頼漢が今日も同じように真ん中で琥珀色の液体に満たされたグラスを煽っている。
「俺をお捜しか?別嬪さん。」
揶揄を含んだ笑みに応える事なく、歩み寄る。
酒のせいで充血した眼で下から上へと値踏みするように眺め回した男が、口の端を上げた。
「近くで見ると、ますます坊主にしとくのが勿体ねェな。今日はひとりか?あの馬鹿強い兄ちゃんとガキはどうした?そういやキレーな女もいたな」
「お前に聞きたい事がある。」
「話なら一杯やりながらにしようぜ?なァ」
伸ばされた指に手首を掴まれるより早く、その手を叩き退ける。
「気安く触るな。」