第34話 華焔の残夢3
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「悟浄!大丈夫ですかっ」
がくりと膝を折った長身に、呼びかける。
「大丈夫なワケねェだろ…」
低くくぐもった声が耳に届くが、眼前の芙蓉から目を離すわけにもいかない。
「気持ち悪くて、吐きそうだってのっ」
ヒュッと空気を鳴らして伸びた鎖の、その先。
銀色に輝く刃が、優美な顔を般若の如く歪ませた芙蓉へと向かう。
――殺れる。
そう思った刹那、ガギッと耳障りな音が響いた。
途中で動きを止められた鎖が、波打つようにジャラッと地に落とされる。
「悟空っ?」
「伯葉っ」
異なるふたつの呼びかけが、ひとりの人物に向かって発せられるという事態に目を見開く。
「…どーなってんだよ…」
悟浄の呟きに我に返り、間一髪で芙蓉を救ったその、あまりにも見知った人物を頭の先からつま先まで眺めやる。
「危ないから下がってて、母さん。」
「母さんだァ?」
悟空の声で聞く初めての単語に、悟浄が裏返った声を上げた。
身に着けているのは、動きやすさを重視したらしいラフなもので昨夜、彼が莉炯の家を出ていった時のひらひらとした女物の服ではない。
でもその顔は、声も、よく知った悟空そのもの。
「…他人の空似…だと、思いますか?」
「生き別れの双子説も候補に入れとけ。」
確かに悟空の出生に関する事には謎が多い。
その線も否めない事もない…
「ごちゃごちゃ言ってないでさっさとやろーぜ!俺、腹減ってんだからさぁ!!」
地面に如意棒を突き刺しながら、苛立ったように言うその様に顔を見合わせる。
「…悟空だな。」
「…悟空ですね。」
「――ってちょっと待て!」
大上段から振り下ろされた如意棒を左右に跳んでなんとか避けると、悟浄の方に狙いを定めたらしい悟空が駆け出す。
「このバカ猿は、またトチ狂ったのかよっ!?」