第34話 華焔の残夢3
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「なんだァ、これ…?オイ、はっ…か」
隣にいる八戒に、視線を移した筈。
「どーなってやがる…」
瞬きの合間に、視界を埋めるのは夥しい数の蝶の群れのみ。
八戒はおろか、女の姿さえない。
「たいした手品だぜ。」
下げた手で拳を作ると、力が入りきらない。
不思議に思っていると、その内に手だけでなく足にもピリピリとした痺れが倦怠感を伴って現れ出す。
蝶が羽ばたく度に目まぐるしく入れ替わる色彩をうんざりと見やりながら呼吸すると、なだれ込んでくる甘い香り。
全身に染み込むようなそれに次第に、頭の芯がぼうっとぼやけ出すのを知覚する。
ただアルコール度数の高いだけの安酒を、浴びる程飲んだ時の感覚。
この蝶…いや、粉……か…?
ぼやける思考の片隅を理性の欠片がちらりと掠めるが、すぐにぐずぐずとした乳白色に溶けていく。
「悟浄っ」
切羽詰まった声が飛び込んでくると同時に、自分が相当危うい状況なのを悟る。
「悟浄聞こえてますか!?幻術の一種だと思います!蝶を見ないでっ」
「見るなって…」
目を瞑る、という月並みな行動を取ってみたが、結果は予想通り無駄に終わる。
網膜に焼き付いたかのように襲ってくる色の洪水を、止められない。
足手まといになるなんて、死んでも遠慮したいものなのだが…
うんざりと見やった蝶に手を伸ばしてみると、忙しなく動く羽根が指先を掠める。
「…触れるってコトは、一応実体か…」
付着した粉を見つめたそこに、現れた錫杖を握り込む。
「なら、片っ端から片してくしかねェってか――」
三日月形の鋭い刃が空を薙いだ瞬間、触れた蝶が切り裂かれて地面に落ちた。
たちまちの内に甘い腐臭を放つ泥土と化した死骸が、足元を埋めていく。
徐々に元の景色を取り戻しつつある視界の中に、気功術で同じように泥土を積み重ねていく八戒の姿を確認する。
「悟浄!」