第34話 華焔の残夢3
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「一体いつから…」
愕然と呟いた八戒と、自分の視線の先。
道から逸れて、少し森に入った辺りに女が一人、こちらに背を向けてしゃがみ込んでいる。
周辺に生えている草をひとつひとつ、大事そうに摘み取っては脇に置いてある籠に入れている。
黙々と繰り返される、単調な動作。
突然そこに現れたとしか考えられないのに、籠に山積みになっている草はどう見積もっても1分やそこらで摘める量ではない。
「…どう思います?」
「そうだな…年は30そこそこの女盛り。一見着痩せするタイプのグラマーな美人ってとこかな。」
「…悟浄…」
こめかみを押さえて首を振るのに、口から煙草を放す。
「安心しろ、俺の目に狂いはない。ありゃ絶対に美人だ。ただ…」
煙を引きながら地面に落ちていったそれを足裏で消し潰しながら、口の端を引き上げる。
「こーんなとこにいる女が、普通の美女とは思えねェけどな。」
「普通の美女でないとすると、絶世の美女とかですか?」
「そう願いたいとこだけど…」
軽口を叩きつつ見つめる先で、女が音もなく立ち上がる。
同時に息を詰めたこちらの存在など、百も承知というようにゆっくりとした動作で、その顔が振り向く。
ぴたりと合わせられた視線に、内心で頷く。
「俺のカン、大当たりだな。」
優美な弧を描く眉に、艶やかな紅を引いた肉感的な口元。
色素の薄い大きな瞳が、こちらを捉えてゆるりと和む。
「こんな所で何をしてるの?」
「…人を、探してるんですけど…」
同じく毒気を抜かれたらしい八戒が、普通に応える。
「人を?この森は広いから、大変でしょうに。」
「ええまぁ…あの、失礼ですが貴女は…」
「芙蓉、と申します。私この近くに居を構えてますので、何か分かるかもしれませんけど…どのような方をお捜しですの?」
少女のように首を傾げて問われ、混乱する。
結界に護られたこの森に住んでいるなど、普通の人間であるはずがない。
だがこの女のどこに自我を失くして狂暴化した妖怪らしいところを見出せというのか。
「悟空って名前の…15歳くらいのガキなんだけど?」